保健所の犬猫問題
SNSの広がりによって、簡単に自分のペットの動画を公開することができるようになったため、現在インターネット上では可愛らしいペット動画が毎日入れ替わるようにして話題になっています。
そのおかげもあって、今は空前の猫ブームとなっており、多くの人が猫を飼い始めています。
そのような状況だからこそ考えるべき問題があります。それが保健所の問題です。
重い話ですが、誰もが考えるべき問題である保健所の犬猫問題に関して今回はお話ししようと思います。
まず、統計データを見てみましょう。
環境省によると、平成27年の引き取り数は犬が46,649匹で、猫が90,075匹です。そのうち殺処分されたのは82,902匹でした。
確かに犬猫の引き取り数は年々減少しており、同時に殺処分率も減少してきています。しかし、82,902という数字は少ない数字とは言えないでしょう。この数字を減らすには、一人ひとりの意識が変わっていく必要があります。
それでは、どのような理由で犬猫は保健所に行くことになり、最終的に殺処分へと至ってしまうのでしょうか。
先に挙げた引き取られた犬の46,649匹のうち、40,187匹は飼い主が不明の犬たちです。この犬たちは逃げて迷子になってしまった犬であったり、野良の犬であったりします。しかし、それ以外の6,462匹の犬は飼い主が飼育放棄して保健所に渡した犬ということになります。猫に至っては14,061匹に上ります。
飼い主が保健所にペットを持ち込む理由にはどんなものがあるのでしょうか?
まず、「転居先がペット禁止のため飼えなくなった」というものがあります。ペットがいるならば、一緒に居続けられるようにペットを飼える物件を探してほしいところです。また、「予定外の出産で子どもがたくさん生まれてしまった」というのもあります。そこは、大変ではありますが、里親を探す努力をしていただきたいです。はじめから選択肢として保健所を入れてしまうと、その子どもたちを殺すことにつながるかもしれないということを忘れないでほしいです。
ペットを飼うということには、命に対する責任を持つということです。ペットは家庭の癒しになってくれますが、癒しの道具ではありません。
ペットに対する知識をしっかりと持ち、家族の一員として大切にするのは飼い主の義務です。
先述した通り、数は減ってはいますが保健所には多くの犬猫がいます。ですので、ペットが欲しいと考えている方は、保健所から引き取るという選択肢を考えてみてください。
実際に保健所での殺処分数が減っているのは、世論として殺処分に反対する声が強くなっていることの現れかと思います。
そのような殺処分ゼロへと向かうために、自治体の引き取り拒否を求める声も強くなっています。確かに、無責任な理由で保健所へとペットを渡しに来る人々には、引き取りを拒否することがふさわしい対応の仕方なのかもしれません。しかし、引き取り拒否を促す風潮というのは本当に保健所の犬猫問題を解決してくれるのでしょうか?
少し考えてみましょう。
引き取り拒否というのは、確かに犬猫の殺処分の問題において数としては表れてくるでしょう。しかし、そこで拒否された犬や猫のその後に関してもう少し想像してみてください。
保健所に預けるしか方法がないので預けに来るという人もいます。そのような人々も含めてむやみやたらに拒否されてしまうと、ここで新たに問題が発生してしまいます。つまり、預けられないからということで捨てられるペットが増えるという問題です。
また、しっかりとした飼育意思がない飼い主を拒否し同じ場所に犬猫を返してしまっても、幸せな環境で彼らが暮らせるとは考えづらいです。その飼い主がいきなり意思を変え、長い間責任をもって彼らを世話するだろうという考えは、あまりにもご都合主義ではないでしょうか。実際に、ネグレクトや虐待的飼育という問題も起きています。
つまり、この犬猫の保健所問題というのは、引き取る犬猫の数を減らし殺処分数を減らすだけでは解決しない問題なのです。
この犬猫の保健所問題は、簡単には解決されないことだということを分かっていただけたかと思います。
だからこそ、ペットを飼うということがいかに責任が伴うことなのかを多くの人に知っていただきたいです。
そのような飼い主の意識の基準を社会全体で高めることが求められているのではないでしょうか。重い問題ですが、ペットブームの今だからこそ考えてほしい問題です。