日本アニマル倶楽部株式会社の統計(http://www.animalclub.co.jp/cms/wp-content/uploads/2017/10/5e985559503900fb567e2b39fb048782.pdf)によると成犬の死因の上位にがんが多いのに対し、猫は腎・泌尿器が第一位となっています。
なかでも腎不全は知らないうちに進行していることが多く、飼い主の目で確認できる症状が現れる頃には既に手遅れということも。老衰で亡くなった猫が実は腎不全にかかっていたというケースも多く、その数は統計を上回るともいわれています。
急性腎不全と慢性腎不全の違い
腎不全といっても、その種類は大きく2つに分けることができます。
1. 急性腎不全
何の前触れもなく出現する。主な症状は嘔吐・痙攣・昏睡など。原因は腎臓そのものに何らかの異常が生じ、正しく血液が送り込まれないことによるもの。また「腎毒性物質」と呼ばれる物質を摂取したことによる中毒。
2. 慢性腎不全
数か月~数年単位にわたって悪化し、症状はほとんど現れない。腎臓の約75%が破壊されて初めて症状が出ることも。尿をろ過するネフロンが穏やかに破壊されていくことにより腎機能が低下していく。先天性のものもあるが、好発年齢は9歳と高齢の猫に多い。
腎臓は一度壊れてしまうと二度と再生しない臓器です。特に尿毒症では、血中の老廃物が全身に回って死に至るという恐ろしい症状がみられます。
腎不全の具体的な治療法
初期~中期の治療においては主に投薬や注射などで過剰な尿毒素の分泌を抑えたり、便と一緒に排出させるなどして出来るだけ猫の体内に毒素を止まらせないようにすることが大切です。通院によるストレスを軽減するため、脱水を防ぐ為の皮下点滴を飼い主さん自らが行う必要もあります。
末期に至ってしまった、また急性腎不全の場合は一刻を争う事態となります。ほとんどの猫がぐったりとして動けない状態になることから入院は必須、獣医師の監視の元利尿剤を投与して毒素の排出を促します。ここで回復の兆しが見られれば初期~中期と同様の治療法を試していきます。
それでも腎臓の数値が思わしくない場合、これがもし人間なら人工透析等の延命措置をとるのが一般的です。しかし、猫が透析を受けるには1回につき3万円ほどの費用がかかります。これを週1回~2回のペースで続けていかなければいけないとなると、悲しい決断を迫られる飼い主さんも少なくありません。
腎不全の兆候と対策
残念ながら腎不全を完全に防ぐ方法はありません。ですが飼い主さんの小さな心遣いから予防できる可能性は高まりますし、発症したとしても初期の段階で症状を抑えることができます。
◆食欲不振とそれに伴う体重の減少
腎不全になったほとんどの猫に体重の減少がみられます。家でも体重をはかる習慣をつけておくと良いでしょう。
◆多飲多尿
水をよく飲み、おしっこの回数が多い時も要注意です。目安としては体重1キロあたり45ml以上の水を一日に摂取していると一般的に「多飲」、体重1キロあたり40ml以上の尿をしていると「多尿」といわれます。
◆貧血、脱水の症状が出ている
歩行時にふらついたり、口内の粘膜が白くなっている時は貧血が疑われます。また、同時に陥りやすいのが脱水症状。猫のうなじ付近の皮を軽く引っ張ってみて、元に戻るまでが極端に遅い場合は脱水の可能性が高いです。
◆毒性のあるものに触れさせない
抗生剤、造形剤などの薬剤のほか、不凍液としても多く用いられるエチレングリコールも猫の腎臓にとって毒となるので彼らの手の届かない場所で保管しましょう。また、ユリ科の植物やヘビの生物毒も同様に注意が必要です。これらは室内飼いを徹底することで防げますね。
毒物に関しては現在特効薬と呼べるものが無く、一度体内に入ると排出されるのを待つほかないので十分な注意が必要です。
いざという時に備えて正しい知識を
腎不全は治療が長期にわたることから、飼い主さんだけでなく猫にとっても気力と根気が必要になってきます。しかし、治らない病気だからといって悲観する必要はありません。原因や対処法を知っておくだけでも猫の寿命は大きく違ってきますし、普段から何気ない変化に気付いてあげることで最悪の事態を回避することは十分に可能なのです。