オテやオスワリを教えているのに、犬が急にあくびを始めてがっかりしたことはありませんか。いたずらをした犬を叱っているときも大あくび。ちゃんと聞いているの?と犬にいいたくなりますよね。
実は犬はあくびをすることで、飼い主さんに一生懸命「落ち着きましょう」とメッセージを伝えているのです。
犬のメッセージ「落ち着いてください」に耳を傾けよう
犬があくびをしたシーンを思い返してみてください。オテやオスワリなどコマンドの練習をずっとしているときや、飼い主さんがちょっと興奮したりイライラしたりいるときではありませんでしたか?
あくびは「落ち着いてください」「もうどうすればいいのかわかりません」という犬のメッセージです。トレーニングが難しくてわからない、できないから休みたい、という気持ちの表れのときもあります。
あくびをしたら飼い主さんも犬もひと休み
あくびをしたからといって「こら!聞いているの?」と怒ったら逆効果です。コマンドタイムはひとまず終わりにして、飼い主さんも犬もおやつを食べて休憩しましょう。
知らない人やお客さんが来たときも、あくびをして落ち着かせようとしていることがあります。そんな時は独りで過ごせるクレートに入れるなど、リラックスできる場所に移してあげましょう。
逆に犬に落ち着いて欲しいときは、犬に向かって大きくあくびをしてみましょう。お客さんに興奮しているとき、動物病院でソワソワしているときに効果がでるかもしれません。
本当に眠いときもあくびをする
実際に疲れて眠いときも、人と同じようにあくびをします。特に問題はないので、そのまま静かに眠らせてあげましょう。
てんかんという発作を持つ犬では、あくびがてんかんの予兆のことがあります。もともとてんかんを持っている犬、いつもと違う震えや体調不良が見られたときは、一度受診すると安心ですね。
犬のことば「カーミングシグナル」とは
あくびで「落ち着いてください」と伝えるのは「カーミングシグナル(Calming signal)」といって犬のボディランゲージのひとつです。カーミングには「落ち着かせる」という意味があります。
犬は本来群れで行動する動物です。群れで協力して効率よく狩りをするには、お互いコミュニケーションをとり、ケンカにならないようにする必要があります。そのため野生だったころからカーミングシグナルを用いて会話をしていたと考えられます。
あくび以外のカーミングシグナルの例
・背中を向ける
「落ち着いて」「冷静になって」と伝えています。突然犬が背中を向けたときは、飼い主さんに冷静になって欲しいと思っているのですね。
「背中を向ける」カーミングシグナルは人から犬にも伝えられます。犬が興奮していたら、背中を向けてみましょう。犬はだんだん冷静になっていきます。公園などで見知らぬ犬を興奮させてしまったときも、背中を向けることでトラブルを回避できることがあります。
・突然フセをする
フセをすることで、自分も仲間にも「冷静になれ」とメッセージを出しています。コマンドを出していないのに、フセをしたときは「落ち着こう」と思っていると察してあげましょう。
散歩に行く前や、飼い主さんが近づいたときに自らフセをするのは、うれしくて興奮する気持ちを自分で抑えようとしています。
状況によっては、おもしろくないことがあったときもフセをします。おもちゃを片付けられたときなど、上目遣いで飼い主さんを見ながらフセをすることがあるのではないでしょうか。
・急にゆっくり歩き出す
相手のイライラを抑えようとしています。時間がなくて急いで散歩しているときなど、犬が急にゆっくり歩き出して焦ることはありませんか?
飼い主さんが「早くしなくちゃ」とイライラすればするほど、ゆっくり歩くことがあります。引っ張ったり怒ったりせず、観念して落ち着いて歩くようにしましょう。
・大きく弧を描いて近づいていく
公園で見知らぬ犬にあったときなど、大きく弧を描いて近づくことがあります。「あなたに敵意はないですよ」とアピールしています。飼い主さんも知らない犬に近づくときは、大きく弧を描くと敵意がないことを伝えることができます。
・口をくちゃくちゃさせる
何か食べている?と思ってしまいますが、くちゃくちゃさせるのは「もうわかりました、落ち着きましょう」と伝えています。叱られたときなどによく出るカーミングシグナルです。それ以上叱っても、犬は疲れるだけでしょう。
飼い主さんのあくびがうつる「信頼の証」
眠くて大きなあくびをしたら、続いて犬もあくびをして驚いたことはありませんか?これは実際に飼い主さんのあくびが犬にうつっています。あくびがうつるのは人から人だけではなく、人から犬へもうつるということが研究され証明されています。
さらにあくびがうつりやすいのは、知らない人より飼い主さんのあくびであることも研究からわかっています。飼い主さんと共感し信頼しているきずながあるからこそ、あくびがうつるということです。たかがあくび、ですが犬の気持ちが表されていたり、信頼の証だったりするのですね。